不倫慰謝料請求の条件

文責:所長 弁護士 佐藤高宏

最終更新日:2025年01月07日

1 不倫慰謝料請求をするための条件

 配偶者が不倫を働いた場合は、離婚を求めることができるだけでなく、配偶者または不倫相手に対して慰謝料を請求することができます。

 離婚をしなければ慰謝料を請求できないわけではなく、婚姻関係は継続して慰謝料請求だけを行っても構いません。

 慰謝料は不倫相手だけに請求しても構いませんし、双方に請求しても構いません。

 不倫慰謝料を請求するためには、いくつかの条件があります。

 

⑴ 配偶者が異性と肉体関係を持ったこと

 慰謝料請求をするための第一の要件は、配偶者が異性と肉体関係を持ったことです。

 手をつないだだけの場合や、キスをしただけでは不倫とは認められません。

 また、「異性との」肉体関係である必要があり、同性同士での性行為は不貞行為とはならないとされています。

 ただし、この場合は民法が定める離婚原因の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性はあります。

 

⑵ 不倫があったときに夫婦関係が破綻していないこと

 戸籍上は婚姻関係が継続していたとしても、夫婦関係が実質的にみて破綻していると認められるときには不倫慰謝料請求は認められません。

 例えば、10年以上別居していてお互いに連絡も取っていないようなケースがこれに該当します。

 夫婦関係が修復不可能な状態にある場合、夫婦関係を法律的に保護する必要性がないと判断され、したがって慰謝料請求も認められません。

 夫婦関係が破綻しているかどうか判断するときには、別居の期間や、離婚の話が具体的に進んでいるかどうかなどが考慮されます。

 ただし、日本の裁判例では夫婦関係が破綻しているかどうかが厳しく判断される傾向があり、夫婦としてやり直せる可能性がある状況であれば夫婦関係は破綻していないとされます。

 

⑶ 時効が成立していないこと

 不倫慰謝料請求は、民法の不法行為という規定に基づく請求です。

 不法行為には時効が定められており、不法行為の損害と相手を知ったときから3年、不法行為のときから20年を過ぎると請求することはできません。

 つまり、配偶者が不倫していることを知ってから3年間何もしなければ請求権は消滅してしまいます。

 また、配偶者が20年以上前に不倫をしていたことが発覚したとしても、すでに時効が成立していることになります。

 

⑷ 不倫の証拠があること

 不倫をした配偶者や不倫相手に不倫があったことを認めさせるためには、証拠が必要です。

 裁判官も、証拠がなければ不倫慰謝料を認める判決を出すことはできません。

 十分な証拠がないにもかかわらず相手方に慰謝料を請求したり訴えを提起したりすると、せっかくの証拠を隠されてしまう可能性がありますし、名誉棄損などで逆に損害賠償請求をされるおそれもあります。

 不倫があったという決定的な証拠になるのは、たとえば、配偶者と不倫相手がラブホテルに出入りしている写真や動画です。

 性行為があったことが強く推認されるメールやLINEのやり取りがあればこれも証拠になりえます。

2 不倫慰謝料の問題は弁護士に相談

⑴ 不倫慰謝料を請求するとき

 このように、不倫慰謝料請求は決して簡単なことではなく、法律的な要件を充たし、適切な証拠を集めたうえで請求を行う必要があります。

 そこで、配偶者が不倫をしていて慰謝料請求をしたいと考えている時には、法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

 

⑵ 不倫慰謝料を請求されたとき

 慰謝料請求をされた場合であっても、相手方の要求に安易に応じてはいけません。

 まずは相手方の請求に対する法律的な反論はないか、相手方の請求は確かな証拠に基づくものかを慎重に検討する必要があります。

 また、慰謝料を請求されること自体はやむを得ないとしても、弁護士が交渉を行うことにより、相手方が請求してきた金額よりも安い金額で和解できる可能性が大いにあります。

 不倫慰謝料を請求したい時、または、されてしまった時は、一人で悩まずに弁護士にご相談ください。

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